先日、長年一緒に働いてきた女性の先輩が退職した。
その女性は、一番の大先輩だった。
再雇用の期間も終わり、いよいよ退職。
長い間お世話になったお礼に、ちょっとした贈り物と手紙を渡そうと思った。
ところが、最近は手紙なんてめったに書かない。
封筒なんてどこにしまったっけ?
引き出しを引っかき回していたら、懐かしいものが次々と出てきた。
昔の少女漫画の付録についていた便箋や封筒。
中学生や高校生の頃、自分のお小遣いで買ったレターセット。
今ではすっかり手紙を書く機会も減ってしまったけれど、昔は可愛い便箋を見つけると、ついつい欲しくなったものだ。
「あぁ、こんなの持ってたっけ」
懐かしくなって、つい手が止まる。
「どれにしようかな」
そんなことを考えながら迷っていたら、思いがけないものが出てきた。
20年ほど前の、あたしの証明写真だ。
履歴書に貼る、あの小さな写真。
何気なく手に取って、思わず見入ってしまった。
「えっ、これ、あたし?!」
もちろん、自分の写真だということはわかっている。
でも、びっくりするくらい若い。
いや、20年前なんだから若くて当たり前なんだけど。
それにしても若い。
そして、自分で言うのもなんだけど……
若い頃のあたし、意外と可愛かったじゃん(笑)
ちょっと自分でもびっくりした。
あたしはもともと、そんなに鏡を見るほうじゃない。
毎日少しずつ年齢を重ねているから、自分ではそれほど変わっていないような気もしていた。
でも、20年前の写真を目の前にすると、さすがにそうはいかない。
写真の中のあたしは、今のあたしとはずいぶん違っていた。
「あぁ、20年って、こういうことなんだ」
なんだか、時間の流れの残酷さを感じてしまった。
その写真を撮ったときのことも、ちゃんと覚えている。
あたしは今の会社で派遣社員から始まり、いろいろな立場を経験して正社員になった。その過程で、同じ会社で働き続けているのに、何度も履歴書を提出しなければならないことがあった。
「ずっとここで働いているのに、また履歴書?」
そんなふうに思いながら、近くのスーパーにあった証明写真のボックスで撮った写真だ。
あのスーパーも、あの写真ボックスも、今でも記憶の中にはっきり残っている。
ついこの間、あそこで写真を撮ったような気がする。
でも、もう20年。
あの頃、30代後半だったあたしは、今では50代後半になった。
その間にはいろんなことがあった。
嬉しいこともあったし、大変なこともあった。
思い出したくないことだってある。
あの写真を撮った頃のあたしは、20年後の自分がどんなふうになっているかなんて、想像もしていなかっただろう。
そして今のあたしも、20年後の自分なんて想像がつかない。
20年後、あたしは77歳だ。
77歳か。今の母親に近い年齢だな。
なんだか、まだまだ先のような気がする。
でも、30代のあたしが50代の自分を遠い未来だと思っていたように、きっと時間は思っている以上に早く過ぎていくんだろう。
そう考えると、ちょっと怖くなる。
若さというのは、失って初めて、その眩しさに気づくものなのかもしれない。
あの頃のあたしは、自分がそんなに若くて可愛いなんて思ってもいなかった。
きっと今のあたしも、10年後、20年後の自分から見たら、まだまだ若いんだろうな。
そう思うと、今の自分も、もう少し大切にしてやらなくちゃいけない気がする。
退職する先輩への手紙を書こうとしていたはずなのに、思いがけず20年前の自分と再会してしまった。
あの写真の中のあたしは、これからどんな20年が待っているのか、何も知らずにこちらを見ている。
20年前のあたしが今のあたしを見たら、何て言うだろう。
「えっ、こんなに老けちゃったの?」
なんて言われたら、ちょっと腹が立つ。
でも、こうして今も元気に暮らしているんだから、まあ悪くない20年だったんじゃないかな。
そして、20年後のあたしも、今の自分を見てそう思ってくれたらいい。
それにしても。
20年前のあたし、なかなか可愛かったなぁ。