定年まで、あと数年。
まだまだ先の話だと思っていた「定年」という二文字が、最近になって急に現実味を帯びてきました。
あたしは現在57歳。製造業で働く、ごく普通の会社員です。
あたしの勤務先は60歳定年。その後は、65歳まで再雇用される制度があります。
65歳まで働ける。それ自体はありがたいことです。
ただ、ひとつ大きな問題があります。
定年を迎えると、給料が大幅に下がるのです。
こうした再雇用制度は、決して珍しいものではないでしょう。
でも、仕事は続く。責任だって、そう簡単になくなるわけではない。
それなのに、収入だけが大きく変わる。
「定年だから仕方がない」
これまで当たり前のように受け止められてきた仕組みですが、あたしはどうしても疑問に感じてしまうのです。
年金は65歳から。では、60歳からの5年間は?
現在、老齢年金の受給開始年齢は原則65歳です。
以前は60代前半から厚生年金の一部を受け取れる世代もありましたが、あたしたちの世代はその対象ではありません。
つまり、60歳で定年を迎えても、原則として65歳までは老齢年金を受け取れないということです。
もちろん、年金を繰り上げて受け取ることはできます。
ただし、繰り上げれば受給額は一生減額されます。
そう考えると、60歳から65歳までの収入は、老後の暮らしを左右する大切な問題です。
住宅の維持費、毎月の生活費、これから増えるかもしれない医療費。
年齢を重ねたからといって、生活費まで都合よく減ってくれるわけではありません。
むしろ、これからの暮らしを考えれば、少しでも蓄えを増やしておきたい時期です。
そんな大切な5年間に、収入が大きく減ってしまう。
これで安心して老後を迎えられるのだろうか。
そんな思いが、日に日に強くなっていきました。
同じ仕事をしていても、給料だけが変わる?
あたしが特に疑問を感じるのは、定年前後の仕事内容と待遇の関係です。
60歳を境に、仕事の内容や責任が大きく変わるのであれば、給与が見直されることにも一定の理解はできます。
でも、これまでと同じ仕事を続け、同じような責任を負うとしたら?
昨日まで担当していた仕事を、今日から再雇用という立場で続ける。
それだけで給与や賞与が大幅に減るとしたら、やはり納得するのは難しいと思います。
もちろん、会社にも人件費や制度運営の事情があるでしょう。
長年勤めてきた会社に、何でも要求すればいいとは思っていません。
ただ、年齢という区切りだけでなく、実際の仕事内容や責任に見合った待遇であってほしい。
それは、決して特別な要求ではないと思うのです。
大幅に給料が下がるのは、誰なのか
もうひとつ、あたしが気になっていることがあります。
それは、勤務先でこれまで再雇用となった人たちの待遇です。
あたしの知る範囲では、役職のない立場で再雇用となった人のほとんどが女性です。
一方、男性社員は管理職として定年を迎える人がほとんどで、再雇用後も比較的収入が維持される仕組みになっています。
つまり、同じ60歳を迎えても、それまでの役職によって収入の減り方が大きく違うのです。
もちろん、管理職として働いてきた人の責任や実績が評価されることに異論はありません。
ただ、役職がないからといって、仕事の重要性や責任が小さいとは限らないはずです。
あたしの勤務先では、少なくともこれまで、女性の管理職は一人もいませんでした。
どんなに頑張っても、女性の昇給には見えない天井がある。そんな職場だったのです。
にもかかわらず、その役職の違いが、定年後の待遇にまで引き継がれていく。
結果として、女性の方が大きな収入減を経験することになっているとしたら。
それは単に「役職の違い」で片付けていい問題なのだろうかと思うのです。
そして、もうひとつ。
会社は、この待遇差をどこまで問題として認識しているのか、ということです。
もちろん、実際に会社がどう考えているのかはわかりません。
でも、声を上げる人が少ないからといって、問題がないことにはならないはずです。
会社のアンケートに、思い切って意見を書いた
そんな折、勤務先で再雇用制度についての説明会が開かれることになりました。
事前にアンケートが配られ、意見や質問を書く機会があったのです。
普段なら、会社の制度に対して意見を言うことは、あまりありません。
でも、今回は自分自身のこれからの生活に直結する問題でもあり、あとに続く後輩の問題でもあります。
黙って受け入れる前に、せめて疑問だけは伝えておこう。
そう思い、再雇用後の給与・賞与の水準について、見直しを検討してほしいと書きました。
特に伝えたかったのは、次のことです。
- 年金の受給開始が原則65歳となった今、60歳以降も働き続ける必要性が高まっていること。
- 一般職は、定年前後で仕事内容や責任が大きく変わらないにもかかわらず、給与が大幅に下がること。
- 同一労働同一賃金の考え方も踏まえ、待遇の公平性や給与・賞与の決定基準について説明してほしいこと。
同一労働同一賃金は、定年前と定年後の自分の給料が必ず同じになる、という制度ではありません。
正社員と有期雇用労働者などの間で、仕事内容や責任、配置変更の範囲などを踏まえ、不合理な待遇差をなくすための考え方です。
だからこそ、あたしが知りたいのは、何を基準に給与や賞与が決まっているのかということ。
同じ仕事を続ける場合でも、大幅な差が生まれるのはなぜなのか。
その理由くらいは、納得できる形で説明してほしいと思うのです。
書いたからといって、すぐに制度が変わるとは思っていません。
それでも、何も言わずに諦めるのは、ちょっと違う気がするのです。
65歳まで働けるだけで、十分なのだろうか
現在、企業には原則として、希望する人が65歳まで働けるよう雇用を確保することが求められています。
これは、働く側にとって大切な仕組みです。
けれど、雇用されることと、安心して暮らせる収入を得られることは、同じではありません。
仕事があるのはありがたい。
でも、働き続けなければ生活できないから働くのと、納得できる条件で仕事を続けるのとでは、気持ちも違います。
60歳を過ぎても、これまでの経験を生かして働きたい人はたくさんいるはずです。
一方で、体力や健康状態を考えて、仕事を減らしたい人もいるでしょう。
あたし自身、体力の衰えを感じることもあります。
それでも、働けるうちは自分の経験や能力を生かしたい。
だからこそ、年齢だけで一律に判断するのではなく、それぞれの働き方や役割に応じた待遇であってほしいと思うのです。
定年は、まだゴールではない
57歳になった今、これからの人生について考える時間が増えました。
60歳以降も仕事を続け、65歳になれば、いよいよ年金を受け取れる年齢になります。
そこから先の人生だって、まだまだ長いかもしれません。
だからこそ、これからの数年間を、ただ定年を待つだけの時間にはしたくないのです。
収入が変わるなら、暮らしをどう整えるか。
会社の制度に疑問があるなら、まずは自分の考えを伝えてみる。
そして、会社の収入だけに頼らない将来についても、少しずつ準備していきたいと思っています。
今回、アンケートに書いた意見がどう受け止められるのかは、まだわかりません。
これから開かれる説明会で、会社の考えをしっかり聞いてみたいと思います。
定年は、人生の終わりではなく、これからの暮らしを考え直す節目。
そう考えれば、まだまだやることはありそうです。
できれば、もう少し希望の持てる節目であってほしい。
そう願っている、57歳の秋です。
参考資料
この記事で触れた年金制度や再雇用制度については、以下の公的機関の情報を参考にしています。
※この記事は、勤務先の再雇用制度について、あたし自身が感じた疑問や経験を綴ったものです。個別の制度や待遇の適法性を判断するものではありません。